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1 はじまり
ひろい世界のどこかの端に、緑ゆたかな小さな国がありました。
その国には、かつて妖精が住んでいたとされる森があります。みずみずしい美しい森です。
ですが、それとはべつにもうひとつ。北の方角にうす暗く、うっそうとしげった森があり、そちらにはわるい魔女が住んでいるといわれています。
よい魔女が妖精を従えて人々に幸福をもたらすのとは逆に、わるい魔女は魔物を従えて人々に呪いをふりまきます。
ひどい日照りがつづいて作物が育たなくなったり、たくさんの人が苦しむ病気をはやらせたり。
国を守るため、王さまはよい魔女と力をあわせて、わるい魔女を森の奥深くに閉じこめました。
妖精の力をつかい、森からけっして出てこられないようなまじないをかけたのです。
閉じこめられた、わるい魔女はいいました。
呪ってやる。
これより千年先に生まれた王子によって、この国は滅びるだろう。
王さまは、わるい魔女の言葉におどろきました。
けれど、よい魔女がいったのです。
だいじょうぶです、王さま。
わたしがかならず呪いをとめてみせましょう。
わたしの代でだめだったとしても、その子どもが。
そのまた子どもが、きっと呪いに打ち勝つことでしょう。
王さまはいいました。
ありがとう。よい魔女よ。
わたしにもその手伝いをさせてくれ。
わたしの代でだめだったとしても、その子どもが。
そのまた子どもが、きっと呪いに打ち勝つことだろう。
そうして、よい魔女は王さまの花嫁となり、力を合わせて国を守りつづけているのです。
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