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4 はやり病
「やれ、王子や。いかがなされたか」
「ただの散歩だ」
「さようでございましたか」
そういってにたりと笑う老人は、王子が子どもの時分からちっともかわりません。あれこそが魔女ではないかと噂されるのも仕方のないことでしょうが、そうすると老人は「わしなぞはただのじじいだ」と、にたりと笑うのです。
「さて、王子や。なにがききたいのかね」
「……ききたいことなぞ、ありはしないさ」
本当は、ずっときいてみたいことがありました。
庭のことはなんでも知っている老人が、あの穴のことを知らないわけがないからです。
黙ったままの王子に対して、老人は口の端をあげて笑います。
「ところで、この国の成り立ちは知っておいでかね」
「エルフェンバインは、よい魔女と王によってつくられたという話か。そうして千年の呪いをわるい魔女が振りまいた」
「それは正解であって正解ではない」
「どういう意味だ」
「魔女は魔女。よいもわるいもありはしない。魔女はいつもたったひとりだ」
「ならば、わるい魔女は悪魔ということか」
どちらでも変わらない。呪いの元凶であることはおなじでしょう。
「ぼくは呪いに打ち勝ってみせる。そのために、ずっと励んでいるのだから」
「王子は魔女を憎いかね」
「もちろんだ。魔女の呪いさえなければ、ぼくはもっとうまくやれたんだ」
「魔女を殺しなさるか」
「それが必要なことならば」
「ならば、そうなさるがよい、王子や」
老人がそんなことをいいだしたのは、町ではやり病が蔓延しているせいだろうと、王子はかんがえました。
お城にもたくさんの声がとどきます。お医者の数が間に合わず、たくさんの人が亡くなっているのです。
そうなると聞こえてくるのが、呪いのうわさです。
千年の呪いではないかと、そんなふうにいう人が出てきます。
王さまは、そんなわるい噂を止めるため、隣の国に助けを求めたり、よい薬をつくる人を探したり、手をつくしているのです。
ぼくはなにができるだろう。
エセルグウェンはかんがえます。
国を守るため、なにをすればいいのかをかんがえました。
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