4 はやり病

2/3
前へ
/26ページ
次へ
 はやり病。  それはかつて、魔女シェンナの時代に国に蔓延した病とおなじものでした。  たくさんの人が死んで、人々のこころは荒れました。  国を安定させるため、シェンナは人々のこころをあつめる「悪者」をつくりだしました。  そこに力を貸したのが、魔女の友達です。  わるい魔女と対立する存在として、誰かいたほうが安心できるとおもった王さまとシェンナは、彼女も仲間に引きいれました。  けれどそれは、シェンナを森に封じこめるための、罠だったのです。  魔女は国にたったひとりです。ひとりしかいられないのです。  シェンナの友達は、自分がエルフェンバインの魔女になるために、シェンナのことが邪魔でした。  こうしてシェンナをいばらの森に閉じこめた彼女は、よい魔女として人々の前に出て話をしました。千年の呪いの話を聞かせました。  王さまとシェンナがこっそりと会っていることを知り、道をふさぎ、そうして王さまに告げたのです。  ああ、王さま、エクトールさま。  シェンナはすべてをせおい、森のなかで祈りをささげることを選びました。わたしに魔女の座をゆずり、すべてを託したのです。  決して外から入ることができない森に、王さまは立ち入ることができません。  抜け道のなくなった今、彼はシェンナに会うことができなくなりました。  シェンナは王さまの友達でした。  だいじなだいじな友達でした。  哀しむ王さまに、よい魔女はささやきます。  ああ、王さま、エクトールさま。  あなたが望むのならば、あなたをシェンナの元へと送ってさしあげましょう。  そうしてよい魔女は、王さまを殺してしまいます。  シェンナは森のささやきでそのことを知り、なげき哀しみました。  エクトール。  あなたが命を()して守ろうとしたこの国を、きっとわたしが守りましょう。  だからどうか安らかに。  グウェンタール・グウェントール  あなたが幸せであらんことを――
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加