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「そのとおり、わたしはいばらの森に住む、千年を生きる魔女だ!」
システィーナはいいました。
町の人々は大きな声をあげて逃げだします。
女たちは扉をふさいで家にとじこもり、勇気のある男たちが斧やくわを持って、魔女にちかづきます。
よくしなる鞭をもった牛飼いの男が自慢の鞭をふるい、システィーナの身体を打ちました。
焼けるような痛みにシスティーナの顔がゆがんだ瞬間、縄を持った男がうしろから近づいて、システィーナを捕えました。
「魔女め。おまえのせいで、うちの畑は作物が育たなくなったんだ」
それを合図に、次々に声がかかります。
「あのむすめが売りにきた木の実を食べたせいで、子どもが病気になったんだ」
「いばらの森で採れた物は、どれもひどいにおいがして、食べられたものではなかったよ」
「あの子が来ると、いつもずっと空が晴れるんだ。日照りを起こしてるにちがいない」
「おとうさんが怪我をした、おまえのせいだ」
魔女め。魔女め。
人々がいっせいにののしります。
声とともに、砂や土がかけられます。
誰かが投げた石が腕に当たり、次第に手当たりしだいに石が飛んでくるようになりました。
先のとがった石が顔に当たり、頬から血がながれます。
システィーナは顔をあげ、ゆっくりと周囲を見渡しました。
いつしかシスティーナのまわりには誰もいなくなっていました。
みんな遠まきにながめ、石や武器をかまえてこちらを見ています。
「魔女が出てきたということは、呪いのせいで、この国は滅びてしまうのか!」
「呪いの王子が、国を滅ぼすにちがいない」
「もうこの国は終わってしまう」
「魔女と王子のせいで、なにもかもが終わりだ」
それを聞いたシスティーナは、大きな声でいいました。
「この呪いを解くことができるのは、王子だけ。呪いの王子こそが、呪いを解く唯一の鍵なのだ。魔女を殺しても呪いは解けぬ。魔女による千年の呪いは、千年後に生まれた王子の手によってのみ解くことができると知れ」
人々はそれを聞いて叫びました。
「王子をお連れしよう」
「王子が魔女を殺せば、この国は助かるのだ」
「呪いの王子は、呪いをかけるのではない。呪いを解く王子だったんだ!」
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