たべるのだいすき

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たべるのだいすき

ぼくはたべるのがだいすきさ。 おなかいっぱいになるまで、すきなものを たべるのさ。 パクパクムシャムシャ おやつだってご飯の前にたくさん食べちゃう。 ママに叱られるからだめなことだってわかってるけど、食べちゃうんだ。 カレー、ハンバーグ、グラタン、スパゲッティ… あー、おいしいな。 でもね、野菜は嫌いなんだ。食べたくない。 カレーのニンジン、タマネギはいらなーい。 ハンバーグのとなりにあるニンジンもいらなーい。 グラタンに入ってる緑のやつもいらなーい。 スパゲッティに入ってる…小さくなってるからこれは大丈夫なんだ。 今日もママが困った顔して、僕がどけた野菜たちをまとめて食べてくれてる。 ありがとう…ママ。 ある日、ママがいなくなった。 パパとママはお互いを嫌いになってしまったので、ママは遠くへ行ってしまったみたい。 僕は悲しくて、涙が止まらなくて、何も食べる気がしなかった。 台所で僕のために工夫を凝らして料理をつくるママの姿はもう見れないのかな。 僕は「辛さ」という香辛料のせいで、お腹が一杯になり、日に日に痩せていった。 パパは仕事で夜遅くまで帰ってこない。 僕は何も食べずに布団の中でずっと眠っていた…ずっと…。 …………暗闇の中、僕は泣きながら探していた。 ママ、ママー、どこにいるの? あっ! そこには、野菜たちにとらわれたママの姿があった。 『はっはっはっ、お前が野菜を食べないおかけで俺たちは自由だ!悪いことが思う存分できる!』 『この女は俺たち野菜を必殺技を使って、少しでも子供に食べやすいようにする悪いやつだ。』 『お前が野菜を食べないとこの女は助からない。お前には野菜を食べる勇気なんかはないだろ?』 そ、そんなことあるもんか! ……ガバッ。 あ、あれ? 僕は涙を拭って、布団から跳ね起き、台所へと向かった。 ガチャ…冷蔵庫にはママが作りおきしてくれた工夫料理がところせましと置かれていた。 ママ…僕…頑張るよ! その日から、残飯に野菜が入っていくことはなくなり、僕の身体に野菜たちは飲み込まれていった。 ……… 「おはよう。おっ、今日は早いな。どうしたんだ?」 外食ばかりのパパに僕は言った。 今から、ママを助けにいってくるんだ。 僕の食べれるようになった野菜を全部見せてくる。 パパの女の人の好き嫌いは直らないかもしれないけど。 【完】
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