ノスタルジア

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ノスタルジア

   空気が乾いているから、何となく爽やかな空間を感じる。  ヒールが石畳を叩く軽く乾いた音、頬を流れる汗の雫、異国の風に吹かれる一人旅。  私は世界で通用するファッションデザイナーを目指し、F国で十数年頑張ってきたけど、芽が出ることはなかった。蓄積した不満や悲しみと言った、ありとあらゆる負の感情を抑える事が出来なくなり、F国を飛び出し、隣国の街を一人寂しく歩いている。  気ままな一人旅……。  違う。                            現実からの逃避行。  正確にはこっちかな……。  そう、私は逃げた。厳しい現実に打ちのめされ、耐え切れなくなり、此処にいる。  回りの意見を聞かずに、見果てぬ夢に憧れ、自分の国を飛び出したのは良いが、自分の無力さを思い知らされ、ようやく現実が見え、そこに自分の居場所が無いことは分かっていても、しぶとく喰らいついた揚句、今に至ると言ったとこだ。  かっこ良く言ってはみたものの、慰められる事の無い、惨めな一人旅であることに変わりはない。  私の事など、知っている人がいない街。  自由でいることに、とても都合の良い街。  そんな所だ……。  石畳の通路を歩き続け、不意に目の前が明るくなり、賑やかな広場が現れた。閑静な住宅街とは打って変わる賑やかな空間。  中央には大きな噴水があり、そこを中心に色々なお店が並び、少し開けた場所では、大道芸人や楽器を演奏している人達が所狭しと、競いあっていた。  皆、夢を見ているんだろうな……。  敵う事のない、大きな夢を……。  そう言う自分はどうなのだろう……。  結局は、何をどう言っても、全てがブーメランのように突き刺さってくる。遣る瀬ない気持ちに満たされてしまうのに、時間は掛からない。傷を癒やす筈の旅は、更に傷口を広げてしまう重症化の旅へと変わってしまった。
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