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夕方、自習室でノートを広げていると、山下が来て肩を叩いた。
「ごめん。待たせた」
小声で言われてあたしは席を立つ。
他に生徒は居なかったけど、担当の先生が教卓に居るので静かに教室を出てから言った。
「ホントだよ。急に、帰り話したいとか言うから、いい迷惑」
「悪い」
もうほとんどの生徒は帰って、人気のなくなった廊下を歩きながら山下が言う。
「昨日、その……なんか言われた?あの人に」
「カッコいい子じゃない、って言ってたよ。そんだけ」
「……そか。いや、なんか変に突っ込まれてたら悪かったと思って気になってた」
「麻子さんは、余計なことは言わないよ」
「……いい人だな」
「うん」
頷いてから、あたしは言った。
「だから、あたしさ、……世間の常識みたいなものがいまいちよく分からないっていうか、信用できないんだよね。麻子さんもおじさんも、本当の親じゃないけど、でも不満はないし、周りはかわいそうみたいに言うけど、いや、あんたたちの方がよっぽど親嫌いでしょ?って思う。両親喧嘩ばっかりで家帰るの嫌って子も居るし」
「……ん」
「だから山下とも付き合いたくないんだ。嫌いじゃないけど、たぶんあたしは人といろいろズレてるから」
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