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外は雨が降っていた。
傘を差して並んで歩いていると、山下が言った。
「さっき各務が言ったことは、分かるよ。間違ってない。……でも、そういう面倒くさいのが家族じゃねえ?喧嘩したりウザかったり」
「だから、うちは本当の家族じゃないし」
「家族じゃないってことはないよ。あの人、各務のお母さんみたいに馴染んでたし、おじさんって人も各務のこと大事に育ててるんだろうなって話聞いて思った。……ただ……何が言いたいかっていうと、各務はこう……人と、なんていうかガチで付き合うのが怖いんじゃない?」
山下は傘を肩にかけて、胸の前で両手を突き合わせる。
「他人だから、って昨日も言ってたけど、おじさんも、あの人も距離持って居てくれるから、付き合うとか、なんか……いや俺は各務が好きだけど、でも付き合ったらたぶん喧嘩とかもするじゃん?そういうのが怖いのかなって聞いてて思った。だから、もしそうなら、いきなり彼氏とかじゃなくてもいいから、ちょっとだけ他のやつより……その」
ざあ、と傘を叩く雨の音がうるさい。
うるさい。
あたしは、山下を置いてすたすたと早足に歩き出した。
「かが……」
「お疲れ」
早足は駆け足になって、ソックスに泥水が跳ねて、あたしはそのまま家に帰った。
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