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「奈々。ただいま」
「おかえり」
いつものようにそれだけ言って机に向かっていると
「少し話せるか?」
おじさんが言った。
「ごめん。今ちょっと集中してるから」
「……アイス買ってきた。冷蔵庫入れておくから」
「ありがと」
麻子さんが連絡したんだろうか。西瓜買ったから食べない?と電話が来たんだけど、今お腹の調子悪いからと断った。おじさんは西瓜は食べない。泣いた後の鼻声を聞かれたくなくてすぐに切った。
キッチンで音がして、それからお風呂に入る音がする。教科書とノートは広げてるけど集中できなくて、スマホで父の日特集を開く。
食べ物、衣類、バッグとかの雑貨。好きな食べ物も、服の好みも知ってるけど、なんだかあたしがこんなの見るのも違う気がしてくる。山下の言葉を思い出す。本当の子でもないのに都合いいとこだけ家族ごっこしてるみたいだ。
あたしは、おじさんも麻子さんも好きだ。でも自分で言った通り『他人だから』かもしれない。スマホの画面がまた滲んで来た時、ノックの音がした。
「奈々。おやすみ」
「……おやすみなさい」
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