4/4
前へ
/17ページ
次へ
 何事もなかったようにハンバーガーを食べるおじさんを見ているうち、涙が出そうになって、あたしは慌てて席を立った。 「ごめん。ちょっとトイレ行ってくる」  急ぎ足にフードコートを出たところで涙がこぼれて、慌ててハンカチを取り出していると前から来た人が足を止めた。 「……各務?」  山下だった。私服で、友達と一緒の。 「……わり。先行っててくれ」  好奇心むき出しの目で見る彼らに言って、山下はあたしに向き直る。 「この前は……っつか、どうした?」 「え?あ、ううん。なんでもない」  と言うのも無理あるけど手で拭ってたら、山下が言った。 「……この前、ごめんな。無神経だった。ヒドいこと言ったな」  あたしは首を振った。 「いいよ。もう。多分その通りだから。……でも、もう大丈夫」 「え?」 「あのさ、……良かったら会ってく?あたしのお父さん。ってほんとはおじさんだけど、今そこに居るから」  山下は一瞬迷う表情を浮かべた。 「……いいのか?」 「なんで」 「いや、なんか……彼氏紹介するみて―だろ。それ」 「それでいいけど、どっちかって言ったら、おじさんを紹介したいんだ。山下に」 「……そっか。そんじゃ」 「うん。……こっちだよ」  手を取るのは照れ臭いので腕を引っ張ったら、腕組むみたいになってしまったけど、あたしは奴を連れておじさんの元に歩き出した。   『あたしのお父さん』了
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加