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こいつに初めて付き合ってほしいと言われたのは、2月のバレンタインデー。女の子たちからたくさんもらったくせに、こいつはわざわざ部活帰りのあたしを待ち伏せてチョコレートを渡した。
「……は?」
「いや、男が女にやってもいいんだろ?俺、各務が好きだ。付き合って欲しい」
去年同じクラスで、一緒にクラス委員もやったし面識はあった。けど
「……悪いけど、受け取れないから」
突き返した。
「なんで」
「付き合うとか興味無いから」
それから4か月。山下は溜息をついて言った。
「あのさあ、なんでそこまで嫌がるわけ?」
「そっちこそ、なんでそんなにあたしにこだわるの」
「そりゃ……つか、それって、なんか各務んちの事情に関係ある……」
あたしは、ぴたりと足を止めて、山下の顔をひっぱたいた。
というか、気付いたらひっぱたいていた。
「あ。……」
山下は、頬をおさえて苦笑いする。
「力あるなー。各務。これじゃ上級生だってボコボコだな」
「……だから、ついてこないでくれる?家のこと言われると、あたし反射的に手出ちゃうから」
頬っぺたから手を離して、山下は言った。
「そんなに……嫌な人たちなのか?」
「違う。逆。……みんな、何も知らないくせにいろいろ言うのがむかつくだけ。よくニュースなんかに出てくる、実の親のくせに虐待して死なせたりする親なんかより、よっぽどあたしは大事にしてもらってる。だから、親がいないから可哀想みたいに見られるのが嫌なだけ」
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