自宅にて(3日目)

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 それから、ビニール手袋を付けた指で後ろをほぐされた挙げ句、何か太い物を突き刺さられた。おそらく張形だろう。  久々の感触に、俺は低い叫びを上げる。 「痛い?」 「だっ…だい…じょう…ぶです…」  これだけで軽く逝きそうになる。だけど、まだまだ足りないという欲もあった。後ろの物はゆっくりと抜き刺しをし始める。その度に俺は呼吸をあらげ、声を抑えるために枕で口を押さえた。抑えきれない刺激が、尻から頭へと一気に駆け抜ける。 「ふぁ…くあっ…」  息苦しくなり枕から外した口から声が漏れる。再び歯をくいしばり、枕に顔を埋める。  不意に、あの時のことを思い出す。初めてアイツと寝た時のこと。すぐに記憶を葬ろうとするが、消そうとすればするほど色々と思い出していく。しまいには、耳の中でアイツのあの時の声が響いた。 『ノリ、好きだよ』 「あああああっ!!」  それを消そうと必死に叫ぶ。だけど、尻の中でうごめく刺激と同時に、あの時のことがフラッシュバックする。  そこから逃れるべく、力を込めて手を握りしめる。爪が掌に食い込んでいき、鈍い痛みを感じる。  脳裏に浮かぶアイツの顔。もう朧気にしか覚えてないはずだが、消すことができなかった。 「ぐ…そっ……ち…く……ちく…しょ…おお…」  そんな思考を掻き分け、枕の隙間から吐息混じりの怨言が漏れる。  意識はさらに曖昧模糊となり、アイツのこと、あの人のこと、様々な記憶がない交ぜになる。  身体中の刺激と欲を抑えきれず、脳内のものが全て消え去りそうになる。意識がだんだん不確かになり、俺の声もたち消えそうにか細くなる。  駄目だ。もう無理だ。俺は諦めて身体の力を抜いた。 「…ゆう……ひ…」  なぜかはわからない。  逝く一瞬の中で、アイツの顔と、藤乃宮さんの顔が、重なって見えた。
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