自宅にて(1日目)

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自宅にて(1日目)

 翌日。いつも通りに起きて、自宅で準備をした。朝御飯を済ませると、勤務開始時間の9時までにノートPCと会社用スマホをスタンバイする。  9時になったら、PCのデータ入力用システムを立ち上げ、予め持ち帰っていた仕事から取りかかった。  まだ体調には問題なかった。念のため抑制剤を飲んではいる。作業はいつもの会社のデスクではなく、自宅の座卓のため、すぐに尻が痛くなる。気分転換のため、頻繁に立ち上がりストレッチする。 「はい、峰藤商事営業3部、谷です。ああ、お世話になっております。すみません、本日私自宅におりまして。その旨につきまして担当は別の者に…」  当然電話もかかってくる。こちらで処理できる分は対応できるが、会社でないと確認できない件は部署内の別の人に引き継いでいた。  午前中は特に問題なかった。しかし午後から、徐々に違和感が出始める。頭がボンヤリし、身体がぽかぽか暖まり始めた。 「やばい、今回は早そう…」  頭のボンヤリ感を少しでも晴らすため、深くため息をつき、首を反らして天井を仰ぐ。壁の時計を見やると、14時40分。終業時間は定時17時30分でまだまだ先だ。確か、あの人が来るのは今日の18時のはず。それまでに持つだろうか。なんとか今日は頑張りたい。 「…よし!」  わざと大きい声を上げて気合いを入れ、再びPCに向かう。  ふと、メールを見落としていたことに気づき、スマホの社内メールシステムを立ち上げてチェックする。俺と直接関係のない案件のメールがほとんどだったが、その中に1件、見慣れない送り主のものがあった。
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