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隠れた才能
窓口では、私の人生を書類でおさらいされた。改めて振り返ると、よく頑張ったなぁ私、と思わず力の抜けたような顔になる。
「どんな方も、幸せ半分、辛いこと半分なんですが、貴女の場合、ちょっと特異的ですね。言うなれば、立ってるだけでトラブルが寄ってくる、というか」
う~んと、窓口の人が顎に手を当てて言う。首から下げた名札には、来世 転 と書かれていた。名前にピッタリな職に就いたようである。
「あ、占い師さんに、珍しい、試練線がこんなに隙間なく引かれているなんてって言われたことあります」
それを言われた時は、全く嬉しくない、と思うと同時に、若い時の苦労は買ってでもしろではなく、買わなくても巻き込まれて苦労出来てるから、買う必要なしと思っていた。あの巻き込まれ具合は、このせいか、と妙に納得してしまったものだ。
「幽霊の才能はないかもしれませんが、厄病神なら、適性高いんじゃないでしょうか」
「厄病神?」
え?自分を溺愛した神様に自分がなるの?というか、幽霊より神様は地位高そうだけど、厄病神って・・・・・・と、眉間に皺を寄せる。
「あ、丁度良い所に。厄さ~ん」
手を振って廊下を歩く職員を呼び止めると、呼ばれた職員がやってくる。
「どうした、転さん」
「こちらの方、そちらの部署に適性がありそうなので、ちょっとご相談に」
ぺラリと、自分の人生が書かれた書類を手渡すと、厄さんがどれどれ?と物凄いスピードで読み下した。
座る私の目の高さで揺れる名札には、節目 厄 と書かれている。
「成程、これは逸材」
書類から顔を上げて私を見ると、ニコリと笑う。
「転生手続き、まだだよな?転さん。こちらのお嬢さん、ウチでもらっても?」
「ええ、はい。ご本人次第ですけど」
「お嬢さん、ようこそ厄病神課へ!!」
「え?えぇ!!?」
捨てる神あれば拾う神ありというが、本当に神様に拾われた。厄病神に、だが。
しかも、まだ受けるとも言っていないのに、何故か承諾したことになっている。
厄介事に巻き込む神だけあって、結構強引だ。さすが、プロフェッショナルな厄病神。
「転生なんて面倒な修行、しなくていい。人間やり直すの嫌だろう、この人生じゃ」
「え、ええ、まぁ・・・・・・」
もう、辛いのもしんどいのも無理するのも嫌なのは確かだ。
「じゃあ決まりだ。採用!!」
どうやら、幽霊の才能はなかったが、厄病神の才能はあったようである。
至って普通の、目立つ才能のない凡人だが、一つくらいは本人が思わぬ取り得があるらしい。
「いや~仲間が増えて嬉しいなぁ。厄病神課、ちょっと最近人手不足なんだ」
ちょっと、心配になる言葉が聞こえた。
死んでまで、過酷労働したくない。
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