雇用契約

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雇用契約

「あの、ちなみに、仕事内容お伺いしても?」  厄さんが、私を見てニッコリ笑う。 「うん?仕事は実にシンプルで、尚且(なおか)つ簡単だ。指定された人か場所に、()ればいい」 「それだけ?」 「そう、それだけ」  実に簡単だった。(うま)い話には・・・・・・を疑いたくなるほどに。 「・・・・・・何か、隠してません?」  生前、転職活動失敗した時の経験が、警鐘(けいしょう)を鳴らす。雇用主という奴は、都合の悪いことは、口を(つぐ)むのだ。そして雇い入れてから、まるで暴露(ばくろ)するかのように話すのである。 「心外(しんがい)だなぁ。本当だとも。そこに居ればいいんだ」  はい、と雇用契約書を渡された。ざっと条件を見ると、結構好条件である。 「仕事は単独が多いから、同僚に会う機会もなかなかないけど、集まると(みんな)仲が良いんだ。パワハラもモラハラもないぞ。ストレスは(みんな)外で発散してくるし。セクハラは、ちょびっとあるかもしれないけど」  いやその “ ちょびっと ” 問題じゃない?と心の中で思った。  まぁ、居場所が出来るならいいか。  何だか少し安心して、雇用契約書にサインする。  それを渡すと、厄さんがニヤリと笑った。
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