28人が本棚に入れています
本棚に追加
雇用契約
「あの、ちなみに、仕事内容お伺いしても?」
厄さんが、私を見てニッコリ笑う。
「うん?仕事は実にシンプルで、尚且つ簡単だ。指定された人か場所に、居ればいい」
「それだけ?」
「そう、それだけ」
実に簡単だった。旨い話には・・・・・・を疑いたくなるほどに。
「・・・・・・何か、隠してません?」
生前、転職活動失敗した時の経験が、警鐘を鳴らす。雇用主という奴は、都合の悪いことは、口を噤むのだ。そして雇い入れてから、まるで暴露するかのように話すのである。
「心外だなぁ。本当だとも。そこに居ればいいんだ」
はい、と雇用契約書を渡された。ざっと条件を見ると、結構好条件である。
「仕事は単独が多いから、同僚に会う機会もなかなかないけど、集まると皆仲が良いんだ。パワハラもモラハラもないぞ。ストレスは皆外で発散してくるし。セクハラは、ちょびっとあるかもしれないけど」
いやその “ ちょびっと ” 問題じゃない?と心の中で思った。
まぁ、居場所が出来るならいいか。
何だか少し安心して、雇用契約書にサインする。
それを渡すと、厄さんがニヤリと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!