逆恨み

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 「疫くん、大変だよ。歩杏ちゃんが!!」  転生窓口でカマキリ眼鏡女―― 戸ヶ(とがり)とお(しゃべ)りをしていた疫の下に、縁結びの神様になった小結(こむすび)が慌てて駆けてきた。 「どしたの? 小結さん」  どこにでもいそうな洋梨(ようなし)型のぽっちゃり体型で走って来た姿は、どことなく可愛い。 「厄病神課のある建物の正面玄関で、魂魄切断用ナイフ持った老婆に、馬乗りに乗られてて・・・・・・」 「え?」 「宇都ちゃんが一緒に傍にいて、立ち(すく)んじゃってて・・・・・・あの子のことだから、どうにか説得しようとか時間稼がなきゃとか思ってるんだと思うんだ」  その時、疫の腕時計がプルプルと震えた。通信だ。  通話ボタンを押してやると、厄の(あせ)った声が響く。 「疫。先崎がまたトラブルに巻き込まれた。お前傍に居るんじゃなかったのか?」 「いま俺、転生窓口に書類届けに来てて・・・・・・。駐車場で別れたんだ。先にそっちに帰るように言ったんだよ。それで厄、状況は小結さんに今聞いたけど、何とかならない?」 「ここで災厄を起こせってか? あんまり被害の出るようなものは・・・・・・お前、あの魂魄切断用ナイフ壊すこと出来ないのか?」  疫が、む~と口をへの字に曲げてしかめっ面をした。 「あんな魔女の道具を? 俺の力全部(そそ)いだって、出来るかどうかってとこだよ?」 「そこは、お前の先崎への迷惑過ぎる程迷惑な愛で、増幅できないのか?」 「え~迷惑って、酷いよ厄~。俺の純粋な気持ちをそんな風にぃ~」  言いながら、疫は「あ」と何事か(ひらめ)いた。
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