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「歩杏ちゃん、厄病神溺愛体質だけど、確か命が助からないような危険はギリギリ回避される子だったと思うんだ」
「・・・・・・溺愛してるのは厄病神のお前で、回避できなかったからこちらに来てるんだろ? あの子」
「でも、もともとそういう運勢の持ち主なんだよ。一番下までは落ちないようになってるんだ。その運勢を強化できれば・・・・・・」
「どうやって強化するんだ? そんなもの」
う~んと考えて、疫は窓の外に目を向ける。
それは下の階に飲み屋がある、福の神達が多く生活する宿舎の屋上。
そこの中庭には、地上へ向けて雪のようにふわふわと舞うものが年中、幻想的に降り注いでいる。
「あった。俺の能力も、歩杏ちゃんの運勢も強化出来るもの」
「何?」
一筋の光が見えて、疫は目を輝かせて隣に立つ戸ヶ里に目を向ける。
「戸ヶ里。大っきなビニール袋が欲しい。出来れば10袋くらい」
「ビニール袋?」
戸ヶ里は慌てて、備品の入った棚へと取りに行く。
「小結さん。福の神に・・・・・・夢渡さんにコンタクト取りたいんだけど、頼める?」
「ああ、うん。すぐ呼んでくるよ。どうしたらいい?」
「ここの屋上に待機してもらって。厄、15分でいいから時間稼いで。あとで始末書書くけど、出来れば書かなくていいように上には掛け合って欲しいな」
「は? 何するつもりだ? お前」
「とりあえず、プランターでも落としてその老婆、ノックアウトさせるくらいは厄、出来るでしょ? 最悪俺が間に合わなかったら、頼んだ」
「・・・・・・プランター、この高さから落としたのがヒットしたら、あの老婆死ぬぞ」
「俺の歩杏ちゃんが助かるなら、心なんて痛まないよ」
「いや、お前の心は痛まないかもしれないが、俺の経歴には傷がつく・・・・・・」
「とにかく頼んだ!! 戸ヶ里、行こう!!」
通信を切って、ビニール袋を手に持った戸ヶ里を連れて駆け出す。
疫の顔は、真剣そのものだった。
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