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「あ~樹路のじいちゃん!!」
疫の、まるで祖父に会った孫のように能天気な声が聞こえて来た。
「何だ疫坊、また悪ふざけでもしていたのか?そのゴミ袋の中身、ケサランパサランだろう?」
「悪ふざけじゃないよ~。俺の能力を倍増させるために、ちょっと拝借しただけ」
「疫坊の? 何を企んだのかは知らんが、こんなところで疫病が流行ったら一大事だろう。ちょっと洗い流そう」
そう言うと、持っている団扇を仰ぐ。するとみるみるうちに空が雲に覆われて、ザァッという音と共に土砂降りの雨が降った。
「先崎さん、無事なら軒下へ」
山居がホッとした顔をして歩杏の傍に駆け寄ると、ハッとしたように空を見上げて飛び退る。
風に吹かれて釣り針から外れたナイフが、ひゅるるるると落ちて来た。
「え!? ぎゃああぁぁぁぁぁっっ!!!」
逃げる間もなく、サクッと歩杏の腕を掠って地面へと突き刺さる。
―― 腕、切れたけど……?
たらりと垂れる血を見て、歩杏はふっと意識を手放した。
「先崎さん!!」
歩杏を見捨てて自分だけ避難した山居が、慌てて駆け寄る。
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