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その後、行く道は
数日後。
「頭痛い、体怠い、節々痛い……」
「インフルエンザですから仕方ありません。まだ熱が上がりそうなので、これからそこに寒さが加わりますよ」
ベッドの傍の椅子に腰かけた山居が、リンゴを剥きながら鬱々とした口調で答える。
「山居さん、それ、励ましになってない」
あれから歩杏は病院へと運ばれた。
腕を掠った魂魄切断用ナイフは不具合が発生して、魂魄切断できなくなっていたらしい。
不具合が発生していなかったら腕が動かなくなっていたらしいと聞いて、歩杏は背筋がゾッとする思いをした。
ナイフが掠った怪我は単なるかすり傷として手当され、今は包帯が巻かれている。
そして雨に打たれて風邪をひいたのだが、これまた疫の力を増幅したプレゼントを強制的に受け取らされていた歩杏は、単なる風邪ではないインフルエンザを発症したのだった。
「歩杏ちゃぁぁん、調子どう~?」
「いいわけないでしょ!!」
病室のドアを開けて、疫が花束片手にやってくる。その後ろには、厄が果物籠を持って入って来た。
山居は疫から花束を受け取ると、花瓶を持って出て行く。
「それだけ反応が良いなら、元気だな」
ホッとしたように、厄が山居の座っていた椅子に腰かける。
「そのインフルエンザの症状さえ治れば、退院して良いそうだ。疫の力で増幅されているから、病院側も広められたら困ると慎重になってるんだろう」
「……皆さんは良いんですか?」
「俺達はほら、同じ厄病神だから大丈夫だろうと判断されたようだ」
いい加減な管理である。
同じ厄病神の歩杏がかかっているのだから、かからないわけはないだろうに。
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