幽霊の才能

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「ここには、幽霊たちの日常が映し出されています」  ご覧くださいと言われて、モニターの前に座るよう(うなが)されると、私は画面に目を向けた。  夜の交差点だ。  とんでもないスピードで走ってくる車が、一台見える。  横断歩道には、会社員風の男性の姿。傍のガードレールには、死亡事故があったのか、花が手向けられている。  男性が、酔っているのか、ふらりと車道へ歩き出した。 「危ない!!」  私は思わず声を上げると、車道へ飛び出した男性は、避けることも出来なかった車に()かれた。運転していた若い男は、慌てて車を止めて外へと飛び出す。  が、そこには何もいない。  確かに、人を()いたはずだ。  首を傾げて車へ目を向けると、ボンネット、フロントガラスに、赤い手形が付いている。  まさか、車の下に!?  アスファルトに手をついて、車の下を覗き込むが、当然、そこにもいなかった。  じゃあ、車の後ろは?  止めた車の後方を見ても、人らしき姿はない。くるりと車の周りを一周するが、どこにも人の姿はなかった。  男が車に乗り込む。そして、シートベルトを締めて、シフトレバーとハンドルを握ったその時。  助手席に、髪の長い女が座っていた。さっきまでは、いなかった女だ。  男は驚いて、ガタッとドアに張りつく。 「・・・・・・ねぇ、どうして私を捨てたの?」  女が顔を上げた。  落ち窪んだ目、挫傷した頬、肉が(えぐ)れてしまって歯列(しれつ)()き出しになった唇。 「うわああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」  震える手でシートベルトを外そうとガチャガチャとボタンを押し、手探りでドアを開けて転げ落ちる。  女は、重力も車の内装(ないそう)も関係なく、それはスマートに助手席から運転席へと移動した。 「・・・・・・あの女のが、良かった?」  ニタリと、()けた口元が笑う。 「ばっ・・・・・・!!!」  男を、トラックのライトが暗闇に浮かび上がらせた。  化け物。その言葉を叫ぶより早く、鉄の(かたまり)()ね飛ばされる。  トラックの運転手が、慌てて降りてきた。  やってしまった、そんな顔をしながら、携帯電話を取り出してどこぞへと通報する。  その(わき)では、最初に()かれたはずの男性が、車の陰から出てきた。一体、どこに(ひそ)んでいたのか。
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