28人が本棚に入れています
本棚に追加
「・・・・・・えっと、これは?」
私は振り返って、カマキリ眼鏡女に説明を求めた。事故映像(心霊絡みの)を見せられても、全く意味が分からなかったのだ。
「先程最初に轢かれた男性は、この交差点で、スピード違反の車にはねられて亡くなりました。そしてこの女性は、先程死亡した運転手の男にモラハラを受けた挙句、浮気されて捨てられました。高層マンションから飛び降り、自殺されています」
どちらも恨みがあるらしい。
「幽霊側から説明させて頂きますと、最初に轢かれた男性、交差点の君としましょうか。この交差点の君を死に至らしめたドライバーはまだ捕まっておりません。ゆえに、ここで彼は待ち続けているのです。自分を轢き殺した相手を」
成程。まぁ分からなくはない話だ。しかし、交差点の君って、ネーミングがちょっと・・・・・・と苦笑いする。
「所属は、地縛霊課です。彼は待っている間に、同じようなスピード違反の車を懲らしめる為、こうして脅かし、たまに仲間を作りながら、この交差点で待機し続けています」
たまに仲間を作りながらって、ちょっとどうなんだろう、それ。
そう思ったのが顔に出たのか、カマキリ眼鏡女が少々眉をひそめた。
「交差点の君には、地縛霊となる素質がありました。そして、何度もスピード違反の車を懲らしめるうち、轢かれるプロに成長したのです。今では、交通死亡事故で地縛霊と化した幽霊の中でも、トップクラスの上手に轢かれる技術をお持ちのプロフェッショナルですよ」
「プロフェッショナルって・・・・・・」
そんな技術、いらない。と私は思う。
「いいですか?上手に轢かれないと、あの手形はつけられません。タイミングの計り方、運動神経の良さも必要です」
意外に難しいらしい。
「じゃあ、あの女性は?」
「彼女は、今しがた亡くなった男性、便宜上、下種野郎と呼びましょう。この下種野郎に祟っていました。所属は祟り課。彼女も彼氏に捨てられた末の自殺、という祟れる素材がありました。なかなか上手く仕留められなかったのですが、一つの物事に凄く執着する才能は目を瞠るものがあります」
一つの物事に執着して祟り続けるのは、確かに才能のような気がする。
最初のコメントを投稿しよう!