幽霊の才能

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「・・・・・・えっと、これは?」  私は振り返って、カマキリ眼鏡女に説明を求めた。事故映像(心霊(がら)みの)を見せられても、全く意味が分からなかったのだ。 「先程最初に()かれた男性は、この交差点で、スピード違反の車にはねられて亡くなりました。そしてこの女性は、先程死亡した運転手の男にモラハラを受けた挙句(あげく)、浮気されて捨てられました。高層マンションから飛び降り、自殺されています」  どちらも(うら)みがあるらしい。 「幽霊側から説明させて頂きますと、最初に()かれた男性、交差点の(きみ)としましょうか。この交差点の君を死に至らしめたドライバーはまだ捕まっておりません。ゆえに、ここで彼は待ち続けているのです。自分を()き殺した相手を」  成程。まぁ分からなくはない話だ。しかし、交差点の君って、ネーミングがちょっと・・・・・・と苦笑いする。 「所属は、地縛霊(じばくれい)課です。彼は待っている間に、同じようなスピード違反の車を()らしめる為、こうして脅かし、たまに仲間を作りながら、この交差点で待機し続けています」  たまに仲間を作りながらって、ちょっとどうなんだろう、それ。  そう思ったのが顔に出たのか、カマキリ眼鏡女が少々眉をひそめた。 「交差点の君には、地縛霊となる素質がありました。そして、何度もスピード違反の車を()らしめるうち、()かれるプロに成長したのです。今では、交通死亡事故で地縛霊と化した幽霊の中でも、トップクラスの上手に()かれる技術をお持ちのプロフェッショナルですよ」 「プロフェッショナルって・・・・・・」  そんな技術、いらない。と私は思う。 「いいですか?上手に()かれないと、あの手形はつけられません。タイミングの計り方、運動神経の良さも必要です」  意外に難しいらしい。 「じゃあ、あの女性は?」 「彼女は、今しがた亡くなった男性、便宜上(べんぎじょう)下種(げす)野郎(やろう)と呼びましょう。この下種野郎に(たた)っていました。所属は(たた)り課。彼女も彼氏に捨てられた末の自殺、という祟れる素材がありました。なかなか上手く仕留(しと)められなかったのですが、一つの物事に凄く執着する才能は目を瞠るものがあります」  一つの物事に執着して祟り続けるのは、確かに才能のような気がする。
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