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幽霊の才能、ありません
「あなた、幽霊の才能ありません」
どしょっぱなに発せられたその言葉に、私は思わずあんぐりと口を開けた。
――幽霊に才能・・・・・・いるんだ?初めて聞いたけど。
それはそうだろう。幽霊になったのは初めてだ。普通の人は、幽霊になった経験は持ち合わせがない。幽体離脱したことがあるとか、死んで生き返ったとかでない限り。
「いやあの、才能云々じゃなくて、事実幽霊になったんですってば」
気が付いたら死んでいた。
それもそうだろう。今から死ぬぞぉ、ほら、心臓止まった、血液流れなくなった、臓器も徐々に活動停止していく、とうとう脳も活動停止した、ご臨終~。などと実況中継しながら死んだわけじゃないから、そういう表現になる。
「まぁ、そうですね。今の貴女の姿を見るに、見た目だけは立派な幽霊ですが」
幽霊に立派も何もあるのだろうか。生まれてみたら人間だったから人間をしてきただけで、形が犬や猫だったら、動物として生を全うしただろう。そして死んだ暁には、犬や猫の幽霊になるのだ。まぁ、犬や猫の幽霊がいるのかどうかは知らないが。
じろりと上から下へと不躾な目を向けられたが、ここは引き下がるわけにはいかない。何しろ私は、幽霊になったのだ。これからは幽霊として生きて行かなくちゃならない。凡人に出来る仕事は、幽霊のみだ。
いや、死んでいるのだから生きていく、という表現は不適切か。
ともかくも、死んだことで現世から弾き出され、あの世の住人になった自分は、あの世で生活する為の地盤作りをしなくてはならないのだ。
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