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「久しぶり。」
久しぶりに会う友人に声をかけても、帰ってくるのはどこかぎこちない挨拶だった。
教室へ向かう途中で声を掛けてきたのは、男と腕を組んでいる久しぶりに会った婚約者。
「あら、ベリオルじゃない。久しぶりね。婚約者をこんなに放置するなんて・・・浮気をするならもっと上手に隠しなさいよ。」
は、浮気?なにを言ってるんだ。それにその横にいる男は誰だ?貴族であればよっぽど末端の貴族でも無ければ、見た事のあるはずだが見た事はないな。
それに俺という婚約者がいながら他の男とベタベタするなど、それこそ浮気を疑われても仕方ない話だ。
「失礼ですが、貴方はこんなに素敵な婚約者が居ながら浮気をするなんて何を考えているんですか?隠そうともしない貴方に僕は軽蔑しています。
僕であれば、例え政略結婚であろうと、その相手を愛し、愛そうとする努力を絶対に忘れない!」
こいつは一体何なんだ。仮にも公爵家の俺に名乗りもせずに話しかけるとは無礼極まりない。学院だからと言ってもここは社交の場とそう違いない。ここでの人脈は将来に、ここでの醜態は家の醜態になる。だからこそ貴族のマナーを最初に誰もが身につけるのだ。
そもそも、俺は確かに学院に来たのは久しぶりだが、王女殿下には、月に何度かはお茶会の誘いを出している。用事があると断られたがな。それで、代わりと言っては何だが手紙を書いて近況報告や、最近の話題などを伝えていた。ここ数ヶ月手紙が帰ってきたことは一度もない・・・
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