これに込められた気持ちは本物?

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これに込められた気持ちは本物?

手紙、それは時代を追うごとにより便利な形へと進化し、近年ではデータ化され、瞬時に相手に送れるようになった。 これはその後も進化を続けた未来での一場面である。 ある仕事帰り、同僚と一緒に居酒屋で最近の異性関係について話していた。 「昨日さ、ケータイに後輩の子からラブレターが届いてさ、見てみたんだだー。そしたらさ、かなりうまく取り繕っているんだけど、体目当てな感じがしたんだよねー。タイプな顔だったし、性格もいいし、課長に目をかけてもらってるしさ、将来安泰じゃね?って思って承諾のメール送ったんだけどさ」 近年では脳波を測定し、機械に反映させる技術が発展し、自分の感情をメールに載せてラブレターを送るのが相手の気持ちを知る方法として流行っていた。 それを再生する時はその人が記録した場面を体験するような感覚だ。そのため、その時の本心をさらけ出すという意味でその人の熱意がこれほどになくよく伝わるのだ。 その後輩もその同僚が好きという気持ちに偽りはないんだろう。しかし、同僚を好きになったのはその美形にもあるのだろう。そこを同僚はいかがわしく感じてしまったのだ。取り直しはいくらでもできることを考えると少しでも疑われる要素は避けるべきだろう。 私もそう思う。 「次の日にごめんなさい。あのメールは見なかったことに・・・って言われてかなりショック。えー何がいけなかったんだろ」 そう、逆に本心と大幅に離れていることでなければ何度か取り直して本心の黒い部分のない部分だけ切り抜くこともできるのだ。 「そりゃ、メールは完璧でしょうけど、後輩からのメール受け取った日に酔った勢いで将来安泰やら、優良物件とか騒いでたでしょ?あのとき後輩も遠くで飲んでいたの覚えてないの?その裏の顔を見つつ、曇りのない愛のメールを送られて怖がられたんじゃない?」 「ええ、全く記憶にないんだけど。止めてよー」 「いやよ。止めたら絡まれるの私だし、どうせ聞けるほど理性残ってなかったわよ」 「くー。無念ー」 一時的な気持ちを切り取ったものなら本心とは限らない。真に思ったことしか伝えられないのも息苦しいだろうが。 まあ、既に家庭があり、今の生活に満足している私には関係のないことだ。
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