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扉が開くと同時に、崎坂くんが歩き出してしまって、僕は正直焦った。
その頃にはもう、僕は心の中に溜まったモヤモヤした気持ちをこのままにできるような状態にはなかったから……。
少し強引な気はしたけれど、先導するような形で崎坂くんを木陰のベンチへ誘うことにしたんだ。
嫌がられるかもという僕の懸念をよそに、崎坂くんはちゃんと指定したベンチに腰掛けてくれて、正直僕は安堵する。
「さっきの……続き、だけど」
「……」
「それ……僕がいらないって言ったの」
「あぁ」
崎坂くんが手にしたままの眼鏡ケースを指差して、そう切り出せば、不機嫌ながらもちゃんと聞いてくれる気はあるみたい。
僕がさっき何故眼鏡を――というよりケースを受け取らなかったのかをちゃんと説明したら、崎坂くんは寸の間ばつが悪そうな顔をした。
その表情を見て、僕はほんの少しホッとしたんだ。
それはつまり、立花さんと会ったことを僕に知られるのはまずいと感じてくれたってことだと思うから。
――少しは脈があると思ってもいいのかな?って思って。
それなのに結局崎坂くん、最終的には僕があの場でそれを指摘しなかったのが悪いとか言い始めるもんだから、僕もついむきになってしまった。
「二人きりで、会ったんだよね? ……立花さんと」
ここまではっきり告げて崎坂くんを責めるつもりはなかったのに、あんまりにもキミが可愛くない態度を取るから……僕だって黙っていられないじゃないか。
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