54.今度こそキミと【Side:鈴木孝明】*

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 ち、近いっ。  崎坂くんは僕に恥ずかしい思いをすればいいって言って。  だからって僕が恥ずかしがってもやめてくれないって言って。  まるで当然の流れのように唇を重ねてきた。  僕はなんの前触れもなく眼鏡(仮面)を奪われたことに少なからず動揺していて――。 「んっ」  まっ、待って! まだ僕、心の準備が……っ。  なんて思うのは、女の子の反応だろうか。  男同士ならエッチしたところで子供ができるわけじゃないし、そんなに構える必要も、狼狽(うろたえ)る必要もないのかも知れない。  ましてや、僕は崎坂くんとこういうことをするの、初めてでもないわけで――。  そう思えば、こんなに緊張することも、躊躇することもないはずなのに。  何でこんなドキドキするんだろう。 「あ、……さ、崎坂くっ、待っ」  唇が離れる合間を見計らって、待って欲しいと……。この行為に対してもう少し開き直れる時間が欲しいと……。そう懇願したんだけれど。  さっき宣言した通り、崎坂くんは僕にそんな隙を与える気なんて微塵もないみたい。  決して嫌なわけではないのに、性急にことが運びすぎるのが不安で堪らなくて、僕は一生懸命崎坂くんの胸元に手をついて彼を押し戻そうとした。 「やめないって言ったでしょ」  なのに崎坂くんは当然のように僕の手を絡め取ると、ひとまとめに束ねてからそのままベッドに押し倒すんだ。
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