54.今度こそキミと【Side:鈴木孝明】*

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「あっ、……やっ」  そうしてなんの躊躇(ためら)いもなく、僕のTシャツの裾から手を入れてきて。  緊張で少し汗ばんだ肌の感触を確かめるように、崎坂くんの手が、スススス……ッと這い上がってくるのが、堪らなく恥ずかしかった。 「そんなに恥ずかしいですか?」  崎坂くんの手が僕のTシャツをまくり上げてきたのを察知して、慌てて身じろぐように身体をズラしたら、揶揄(からか)うようにそう言われて目を(すが)められた。 「じっ、自分で……」  崎坂くんの言う通り僕は男だ。  同性の前で上半身をさらけ出すくらい、本来なら何てことないはずなんだ。  なのに崎坂くんに脱がされると思うと、途端羞恥心が頭をもたげてきてしまう。  だったら――。  だったら自分で脱いだほうがマシな気がしたんだ。  崎坂くんを押しとどめて、緩く束ねられた束縛から抜け出して、自分で脱ごうと身体を起こしたら、 「ダメ」  まるで僕の目論見なんてお見通しだと言うように、振り解いたばかりの手で、僕の動きを止めにくる。  そのまま片腕でギュッと抱きしめられて、耳元に唇を寄せられる。 「俺がさっき言ったこと……覚えてないんですか?」  そうしておいて、低めた声で崎坂くんが囁くんだ。  僕はその声にゾクリと身体を震わせる。 「あ、あの、でも……」  それでも身体を強張らせたまま一生懸命言い募ろうとする僕に 「アンタのそれ…煽ってんの?」  言われて、なんの前置きもなく耳孔へ舌を差し入れられた。
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