はじめての恋人

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「恋人ができたら紹介してね」と制服姿で話したあの子に 「恋人ができた」と人づてに聞いた 「おめでとう」と喜ぶ言葉は言えずに 「くだらないわ」とみっともない負け惜しみ おそろいのチャームを鞄につけて にこにこしながらひっついているのかしら あの子は(うぶ)だから 手を繋ぐときはきっと顔を赤らめているわ あの子の幸せそうな顔をいくらでも想像できるから 祝いたいけど祝えないの 「お久しぶり」とあの子に会った 「チークを変えたの」ときれいに飾られた顔に触れる 「そうなんだ」と恋人については知らんぷり 「似合っているよ」とてきとうな言葉で平気に笑って見せた 「おめでとう」とやっぱり言えなくて 「私は私よ」と気にしないふり 出逢いはどこで 相手はどんな人なの あの子は勇気がないから きっと告白は向こうがやってくれたのよ あの子は昔話したことを忘れた顔をするから 聞きたいけれど聞けないの
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