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リリーヴ最恐と謳われる宮の圧に耐えられない。
ネクタイを掴まれ、至近距離で鋭い視線を向けられた幟季は観念したように小さく息を吐いて彼女が望む言葉を口にする。
恐怖ですくみ、強張った笑みを張り付けて――
「ぼ、僕を生かしてくれてありがとう……宮先生……」
「はい、よくできました」
ネクタイから手が離れ、解放されると同時に幟季は水面から飛び出したように激しく呼吸を繰り返す。
どうやら宮のプレッシャーでまともに呼吸ができていなかったらしい。
「次に私を憐れむようなことを言ったらネクタイだけじゃ済まさないわよ」
「あはは……相変わらず手厳しいな宮先生は……」
高圧的な宮の言葉に幟季は苦笑で返しながらも、互いの間には確かな信頼があった。
いつだって自分が道を誤れば、必ず彼女が正しい道へ引き戻してくれる。
「ホント、キミは頼りになるよ清歌」
彼女には届かないか細い声で感謝の言葉を呟いて、幟季はいつも通りの自分を取り戻す。
くよくよしてはいられない。
宮の信頼に応えるために、そしてリリーヴのリーダーとして強くあるために――
「さぁて、僕も準備に取り掛からないとね!! きっと皆も待っているだろうから!!」
「やっぱり“アレ”をやるのね」
「当然!! なんてったってリリーヴの大勝利だからね!! 盛大にお祝いしないと!! これからオカンに料理のリクエストをしようと思ってたんだ!! 宮先生も手伝ってくれる?」
「そうね。たまには私も水無月雫にリクエストしようかしら」
陽気で賑やかに振舞ういつも通りの幟季の姿に、宮は小さく笑みをこぼして“アレ”の準備に取り掛かる。
何かと理由をつけて節目節目に執り行われる盛大なパーティーを。
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