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シャドー化を使って抜け出すのが早いが、友人相手にそれはやりすぎだ。 意地悪にからかう二人の包囲網から、身を捻らせて何とか抜け出したところで―― 「あぁ! ずるい! 私も混ぜて欲しかったのにー!」 顔を上げれば、料理を取りに行っていた詩音がこちらに駆け寄って来ていた。 天使のような笑顔で金色の綺麗な髪がなびくこの光景は、何度見ても色褪せない。 それが近づいて、近づいて、近づいて―― 「しお……」 「えいっ!!」 駆け寄って来た勢いはそのままに、詩音が俺の胸の中に飛び込んで来た。 柔らかで温かな感触と、ふんわり香る甘い香水の匂いが、俺の脳内をバグらせ荒らし始める。 「―――ッッひゃぅぁァッッ!!??」 まずは吸い込んだ空気が行き場を失って、口から変な声が出た。 詩音は俺達がおしくらまんじゅうでもして遊んでいると思ったのだろうか? 身構えていないところに、不意打ちでゼロ距離をぶちかまされて、心臓が口から飛び出そうになる。 時と場所を選ばず、無意識化で突然投下される詩音の爆弾は誰にも予測できない。 これでも一応恋人という関係なのだから、いい加減に馴れないといけないのだが……まだまだ時間はかかりそうだ。 ひとまず己の精神を安定させるためにも、震える手で詩音の肩を掴み、そっと胸から引きはがす。
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