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「し、ししし、詩音。持ってきた料理が落ちたらどうするんだ……あ、危ないだろ……」 「あ、そうだね! 皆が楽しそうだったからつい抱き着いちゃった! えへへ!」 精一杯の平常心を演じ、絶え絶えの息で注意を促せば、詩音はてへぺろ! と言わんばかりに舌を出して持ってきた料理を近くのテーブルに置いた。 詩音は相変わらずスキンシップに関して鈍感というか……いや、もしかしたら俺が初心すぎるだけかもしれない。 『だぁぁぁっ!! クソッッ!! 見せつけやがってこの弱虫がッッ!!』 「わあっ!? いきなり出てきて耳元で叫ぶなよクロ!!」 相変わらずなのはこちらも同様。 俺の肩から飛び出したのは小さなスライムの姿を象ったクロ。 詩音との接触があると、必ずと言っていいほど嫉妬を剥き出しにして、俺に怒りをぶつけてくる。 いつもは不快に感じるこのやり取りも、“当たり前の日常”を感じて思わず小さな笑みがこぼれた。 「あ! クロくん出てきてくれたんだ! 丁度料理を運んできたから一緒に食べよう? きっとまだ食べたことないモノあるよね!」 『お、おぅ』 そこへ、スライムクロに気付いた詩音が、両手を伸ばして小さな身体をすくい上げた。
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