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『ほぅ、黒騎士は捨てたんだな? ならいいじゃねェか。この場に居る祥悟に罪はねェんだから』 「な! やっぱり答えはもう出てるだろ?」 優秀な相棒のパスを受け取って、決定的なトドメを刺す。 もう祥悟はイーヴァの黒騎士じゃない。 いつまでも過去に縛られて動けなくなったら、改心した意味がないだろう。 「す、すまない。皆、あ、ありが、とう……」 ようやく俺達の言葉を飲み込んだ祥悟はか細い声で礼を口にした。 恥ずかしそうに小さく笑みを見せる親友の顔を見て、やっと重い肩の荷が下りる。 あぁ、ようやく俺のよく知る親友が帰って来たんだ、と―― 「お帰り、祥悟」 ホッとして思わず口をついて出た言葉がこれだった。 言葉の意味を察した祥悟は少し恥ずかしそうにそれを聞き入れて、口を開く。 黒騎士ではなく、祥悟としてこの場に戻って来た証として―― 「あぁ、ただいま」 一度は決別した親友との関係―― それが元通りの形に戻り、最高の結末を迎えることができた。 これで昔のように祥悟と一緒に笑って過ごすことができる。 手始めにまずはこのパーティーを共に過ごそうじゃないか、と一歩を踏み出そうとしたところで―― 「すまない。実は俺からお前達に伝えたいことがあるんだ」 「え?」 祥悟から話を持ち掛けられ、出鼻をくじかれた。 しかし彼の真剣な面持ちを見れば、話の内容は重要なのだろうと察することができる。 「な、何だよ改まって……」 多少不安になりながらもその続きを促せば、祥悟は小さく息を吐き、意を決して言葉の続きを口にした――
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