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02.Epitaph
喪主を務める母が疲れてるのは、この『娘達』が原因だ。
「……また、来ましたよ」
葬儀社スタッフもプロだ。
仕事柄、香典泥棒であるとか、不審者への対応は慣れているだろう。
ましてや、今日は『奥州筆頭ドン・ファン』という、突っ込みどころ満載の通り名を持つ親父の葬式。
勿論、墓碑銘にはその文字が彫られる予定だ。
裏社会の顔役とも繋がりのある親父。
親父の友人同士が、皆友人という訳でもない。
抗争中の団体もセレモニーホールには訪れている。
雄二に備えて、間違えた、有事に備えて、国家公務員も警戒している。
あ、雄二は俺の名前ね。
この家、子供は俺一人なのに、何で『雄二?』とか想っていたけど。
待ってたら、雄一とか雄三も来るんじゃないかって状況。
今の処、やって来るのは、女の子だけだ。
謎の手紙を持参して参列してるだけだから、葬儀社も追い出せない。
国家権力でさえも、民事不介入ってことで見守るだけだ。
もし、追い出すとしたら……そう、正統な後継者である俺だけだろう。
騒ぎを起こしてる訳ではないので、正当な理由にはならないか、手紙ごときで。
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