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「おい、お前一体何時間俺を待たせたら気が済むんだ?」
「ご、ごめん!もうすぐ支度がすむからさ」
今日は清明の妹の結婚式
数日前からこいつは俺に楽しみだと言っていた割に支度は遅く
俺は三十分も前にさっさと支度を終え一人玄関先で待機している
「司、ごめん今、準備出来た!」
「ちょっと待て!清明…お前髪の毛ハネてる」
「えぇっ!さっき見た時は大丈夫だったのに~」
「本当にお前はこういう所は昔となにひとつ変わらないな~ククッ」
「あんま昔の事は思い出さないでよ!…ッ!?」
タバコに火を付けながら笑ってそう言うと晴明は昔の事を思い出したくないのか拗ねた顔を見せ、頭を撫でてやると目を見開き顔を真っ赤にさせた清明の顔が見えた。
「ハネも直ったから行くぞ!あいつ待たせるとウルセェから」
「ね、ねぇ司!俺達って家族だよね?」
晴明は本当に可笑しい奴だ
二回目に病院に駆け付けた時、お前自身が言った言葉と俺が言った言葉を忘れたのか?
司…ボク、司が居なきゃ怖い
笑う事も出来ない
淋しい…苦しい…
『なら俺と家族になろう』
か、家族…?ボクと司が…家族に?
『お前の痛みや苦しみ、俺も一緒に背負う…だから俺の前から消えないでくれ』
先にボクの前から消えたのは司じゃないか
『分かってる…俺は、あの時と同じ事を繰り返そうとしているよな…遅くなければ今から俺の隣に居てくれないか?』
本当に…?ずっと隣に居ても良いの?
もう…離れなくても良いの?
『あぁ…二度と離れない』
家族になったらずっと一緒に居られる?
もう、淋しいと思わなくて良いの?
『もう、一人にしない…だから…もう、俺の見てない所で飛び降りるのは止めてくれ』
司…これからは、ずっと…ずっと…一緒に居ようね?
「ねぇ、司」
「なんだ?」
駅まで二人肩を並べ歩いていると真横からは十年間、聞き慣れた声が聞こえ俺が顔を向けると清明は、満面の笑みを浮かべ俺を見ていた。
「司は、その…ボクの事…」
「…なんだ?ゆっくりで良いから言ってみろよ」
浮かべていた笑みは、桜色に染まっていき次第にモジモジと指をくねらせて口ごもる
「えっとね…その、恥ずかしいよ…」
「清明は、中学卒業辺りで気付いたのか?」
「え…?」
「いつ気付いたんだ?この気持ちが恋だって」
清明の言わんとしている事が分かり先に話を振り、清明の胸元に指を指すと桜色をしていた清明の顔は熟れたリンゴのように真っ赤になり両手で顔をおおい隠す
「顔隠すなよ!ホントに夜と大違いだな~」
「そっ、そんな…恥ずかしい事…言わないで欲しいのさ…」
「で、どうなんだ?」
「え…?あ…違う…よ、ボクは…司が病院に来てくれた時から…かな?」
「ふ~ん」
「そう言う司はどうなのさ!!」
リンゴみたいな顔は、開き直ったのか真っ赤にしたまま叫ぶようにそう聞いてきて
「俺は…」
俺はもっとずっと前から好きだったんだと思う
きっと気づいてないだけで…
「お前が教室の窓から飛び降りた時からじゃね?」
飛び降りた後のお前の姿に一目惚れしていたんだと思う
「え…あ…そっか…へへっ!」
「清明、幸せか?」
「うん…十分過ぎるくらい幸せだよ!」
十年前俺達は友達だった。
でも、今は友達じゃない
“家族”になった――
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