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でも、いつまで待っても衝撃は訪れなかった。
なのに肌に触れる空気はどこかひんやりしていて。
まるで、私とあいつが出会った時のような、あいつが死んで私が時間を戻った時のような、時間を止めている時の空間のような気がした。
だけど、私は何もしていない。
ゆっくり目を開ける。
──そこにはあいつがいた。
「なん、で……?」
何度も繰り返して未来は変えたはずなのに。
あいつと生きる道を見つけようとして、諦めて。
あいつと出会わない道を見つけて、私はこいつに出会うことを諦めた。
なのに。
出会ってしまったらまた繰り返してしまう。
でも、もしかしたら。
あいつの姿を見ると、やはり考えてしまう。
もしかしたら、変えられるかもしれない、と。
「ねぇ、」
「なぁ、」
声が被ってしまった。
これも何度かしてしまったことがあるけれど、そんな気まずさが気にならないくらい嬉しかった。
……嬉しかった。
私は、思ってはいけないのに、逆に失敗したと思わなければならないのに嬉しいと、そう思っている。
「先にどうぞ」
「俺は死神だ。お前は俺が時間を静止するのを止めたら死ぬが、死神になれば違う。それに、お前には死神としての素質がある」
何百回と聞いた、ちょっと口下手な台詞。
これが、こんなに嬉しいなんて。
涙が出そうだけど、いきなり泣いたら引かれるので我慢して、代わりにゆっくり息を吐き出す。
溢れそうな感情と一緒に。
「俺と一緒に来ないか?」
こんなに嬉しいのに。
体中の細胞一つ一つが跳び跳ねているような喜びを感じているのに、断れるわけがない。
またバッドエンドになるとわかっていても。
また繰り返すことになるとわかっていても。
また悲しみ絶望することがわかっていても。
私が、断れるわけがなかった。
「断るわけないでしょ?」
再び時間が動き出した時、私とこいつは近くの大きなビルの屋上にいた。
突然トラックが来たと思ったら私が消えていて、友達はとても驚いているに違いない。
少し笑うと、あいつはこっちを見た。
きょとんとした顔はあいつらしくなくて、またちょっと笑いながら思う。
やはり私は離れられない、と。
一週間遅れのその日、死神のこいつと死神見習いになった私は出会った。
たとえそれがどんな結末をもたらすか知っていたとしても、私は嬉しくてたまらなかった。
そう、嬉しくてたまらなかったのだ。
私の心は、今日の空のようにいつの間にか晴れやかだった。
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