第1話 格闘天使ちゃんの憂鬱

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「……あれ、それ茅野さんのノートですよね? どうして矢井戸君が?」 「……え、いや」  ギクッとなって、つつーっと柚葉に目をやると──。  柚葉は頬を紅潮させたまま目を見開き、ノートと先生の顔を交互に見て、あわあわと言葉を探しているようだった。  緊張してるのか舞い上がってるのか、さっきまで俺にまくし立てていた剣幕などどこへやらだ。  ──こいつの心の中を察するに……。 『野波先生が表紙だけ見てあたしのノートだって気付いてくれるなんて……!』  ってとこか。  ……この猫かぶりめ。誰だお前。 「あー、さっき借りたんですよ。写さしてもらおうかなーと思って」  俺は正直に野波センセーに告げた。  提出ギリギリにそんな事をするなんて、自分のノートが真っ白なのを白状するようなもんだけど。  ──…あれ?  そういえば俺ら、ついさっきまでノートを巡る攻防戦繰り広げてなかったっけ。  ……まぁいいや。
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