第1話 格闘天使ちゃんの憂鬱

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「いつもあんがとねー。ゆずたんマジ天使。恩に着るわー」 「はいはい、だからゆずたんはやめてってば」 「じゃあ、ゆずぽん」 「挙句ポン酢にされたし」  と、脱力する柚葉から上質なリングノートを受け取る。 「てか綺麗に使ってよ? それと昼休み終わったら必ず返して。じゃなきゃ正拳突きだから」 「怖っ! マジかよ、ヤメテー。反射的に上段受けの構えしそうになるから!」  大げさに身構えると、柚葉の隣にいる友達の香苗(かなえ)ちゃんがケラケラ笑っていた。 「夫婦漫才みたーい」  ……おお、香苗ちゃん、なんて嬉しいことを……! 「ちょっと香苗……こいつと夫婦とかマジやめて」 「ナイス香苗ちゃん、もっと言って。ゆずたんは俺の嫁。むしろ俺がゆずたんの嫁」 「矢井戸、いい加減殺意湧くから黙って」 「てへ」  俺らのやり取りに、香苗ちゃんはもう一度「きゃはっ」と声を立てて笑った。
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