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処刑された隣国の王子こそ、手紙の主。彼は長年、湖の畔の塔に幽閉されていたのだ。
王子が拾った紙片は隣国の王子が窓から投げた数々の手紙のうちの一つ。たった一つの小さな窓から「風に乗り届け」と、自国へ宛てた手紙だったのだ。
隣国の王子は自分がどこにいるのかもわからない。小窓から見える景色が唯一自分の場所を特定できる手掛かりになる。対岸に見える城を目印に場所を記し、助を呼ぶ手紙を何通も書いていた。
側仕えは王子を塔に近づけるなと申しつけられていたので、初めから対岸にあるのが幽閉塔だと知っていた。たまたま幼い王子に拾われたから良いものの、兵士や王宮勤めに見つかったらただでは済まない。以来、側仕えは手紙が誰にも見つからないよう、夜な夜な湖を渡り、塔の周辺の紙切れを回収して回ったという。
そして、まず自分が塔の窓へ向けて手紙を投げ入れた。ここは貴方の城から遠く離れた敵の領地。むやみやたらに手紙を落とさぬように、と。
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