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二人はひとしきりじゃれ合うと、王子が湖の対岸を指さした。対岸には塔がそびえている。あまり高さはなく簡素な土塀に窓は一つだけ。
「あそこから飛んできたのかもしれないぞ。夜になると明かりが点くんだ」
「塔の灯りを見たことがあるのですか。王子、夜更かしをなさっているのですね。ああ……なんてことだ。お母さまに報告しなければなりません」
「ダメ! お願い秘密にして」
「では、お城に帰ってお勉強の時間です。この手紙――ご自分で読んでみませんか?」
「読む!」
塔の上部の小窓からは毎晩、オレンジ色の灯りがほのかに揺れている。きっと誰かが住んでいるのだろう。もし、あの塔から飛んできた手紙だったらと思うと胸が躍る。返事を書いてから塔を訪ねよう。そして友達になるんだ。王子は毎晩、湖の対岸を眺め空想しながら眠るのだった。
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