エピソード 1

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エピソード 1

彼ったらね、とっても親孝行なのよ 若いのにね 最近こんな人、なかなか居ないわよ 彼はね 月に1回、必ず、ご両親のところに顔を出すの あらやだ! 彼って呼ぶのは、まだ少し早いかしらw 彼はいつも、わたしの住まいの「お隣り」に来るの 月に1回ね でね 彼がご両親のところに顔を出したときは 必ず、わたしは彼のことを、陰からじっと見つめてるの 彼は、たぶん、わたしのことはまだ気がついていないと思う だって わたし、彼に見つからないように、そっと見つめてるから だから彼は、気づいていない 今月もそろそろ、彼、来ると思うわ 彼とお付き合いを始めたらさ もしお付き合いまで発展したらさ あなたにも紹介するね きっと、あなた、羨(うらや)ましがると思うわ エヘヘッ! え? 自慢したいわけじゃないのよ あなたにも知ってほしいの、彼の良さをね ただし! 取らないでよ! 彼はわたしの彼なんだからっ!w ・・・・・・・・・・ あっ! 来た来た! シーッ!! 静かに! 彼はね ご両親のところに来るとね まずはご両親に、花束を渡すの そしてそのあとね 両膝(りょうひざ)を地面につけて 「線香」に火をつけてね ご両親の前に線香を立てて そして 両手を合わせて 目を閉じて 静かに祈るの かなり長い時間、祈るの 親孝行でしょ ほら、きょうも祈ってる 静かに祈ってるでしょ!? なんて親孝行なんでしょ!! わたし、彼のあの「祈る姿」を見ると、キュンとしちゃうの 胸が痛いの! あなた、分かる?この気持ち あなたなら、分かってくれるでしょ!! わたしもね 死んで7年になる、この秋でね とにかく退屈だった もう死にそうなくらい退屈だった でもね 今年の春、彼がここに来るようになって 6回くらいお会いして ていうか、6回くらい、じっと見つめて わたし、彼を見つめるようになってから 「生きる希望」がわいてきたの もう、楽しみでしょうがないの、月1回、彼を見つめるのがさ ウキウキワクワク! こういうのを「生き甲斐」っていうのかな!? え? もう死んでるのに「生き甲斐」はおかしいって? 違いますっ! 死んでるからこそ 生き甲斐を欲しいんですっ!!
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