《起》春に咲く花。

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今日の東吾は、いつになく積極的にオレに関わってくる。そこに煩わしさは感じないが、注がれる眼差しや、距離の近さに戸惑った。 思えば、土師東吾という人物を、オレは何も解っていない。 何が好きで、何が嫌いなのか。 趣味も、人間関係も、どんな食べ物が好きなのかも── そもそもオレは、他人への興味が薄いのだ。 なのに、甲本薙に出会ってから、そんな日常が一変する。 人と関わることで、これまで見えなかった多くの事に気付かされたのだ。 今なら。 今のオレなら、奈央を理解してあげられるだろうか? 彼の『友達』に、なれるだろうか…? 思いに耽っていた、その時。 「瑠威。」 不意に、東吾が口を開いた。
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