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柔らかな春の陽射し。
新鮮な草の薫り。
ふんわりと空気を含んだ花壇の土に、 一株一株、丁寧に花を植え付けてゆく。
ロベリアは、寄せ植えやハンギング・バスケット等に使われる花だが、オレは敢えて地植えを選んだ。
此処に種が零れれば、秋にはまた同じ花が咲き乱れる。
白、青、紫──
可憐で細やかな花だが、身を寄せ合うように群れて咲くロベリアは、春から秋の花壇を、華やかに彩るだろう。
楽しみだな…
ふと、口元が弛んだ。
植物が芽吹くのは嬉しい。
花が咲けば、もっと嬉しい。
努力が報われた喜びと、達成感がある。
開花するその日を待ち詫びながら、オレは作業に没頭していた。
それにしても、今日は暑い。
春にしては強すぎる陽射しが、剥き出しの肌に突き刺さる。額に滲んだ汗を拭った──その時である。
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