プロローグ

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2021年4月29日 私こと江東真実愛(エトウマミア)は3歳年下の弟、醒(セイ)と共にアメリカ○○州の小高い丘にある墓地に来ていた。 母が好きだったピンクの薔薇の花束を3つ持ち、1年ぶりの渡米。 だが弟と2人で来たのは初めてだった。 昨年まで母の妹である志麻(シマ)叔母さんと3人で来ていたが、今年はどうしても外せない用事があるとのことで2人きりに。 でも、これで良かったのかもしれない。 3人分の花束を持っている、それは私と醒の家族全員の分だから。 毎年忙しい叔母まで付き添わせるのは申し訳なく思っていたし、家族だけでこの日を迎えるのも悪くないと思えたから。 だって...そうじゃなきゃ思い切り泣けない。 たった3年の間に3人も家族を次々と亡くしたのだ...数年経っても、あと何年経とうとも、この地で毎年流す涙は...私のために犠牲になったんじゃないかと心に刺さるから。 どうにも出来なかった生き続けるしかない私にとって、家族の墓前に立つことが1年に1度許される感情の行き場(生き場)なのだ。 .
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