第1章

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“いらっしゃいませ” (えっ?!) こんな時間に来店する客が? 黒服の上司が1人の男性客を案内し、カウンター席へ導いた。 背は高く濃いグレーの背広はきっとオーダーメイドのよう。 大人の男のファッション紙から出てきたようなその客はバーテンダーに短く何かを注文すると、チラリとこっちに振り向いた。 (すげぇカッコイイ人だ...) 20代後半か30代前半か、落ち着いた物腰と雰囲気がこの店中のどの客よりも際立って見え、そしてカッコ良かった。 一瞬おれと目が合った気も...。 まさかそっちの気があるとは思えないが...一頻り店内を見渡すと、バーテンダーが出したグラスに口を付けた。 (ロックかよ...渋い!) そうこうするうちにVIPからママがそそと出て来てその男の方へ行った。 名刺を交換し、ママが深々と腰を折る。 どうやら上客みたいだ。 (誰なんだろう...初めて見る顔なのにママがあの態度取るってことは...) この時おれはまだ何も知らなかった。 この人がおれとねぇちゃんの今後を変える人になるとは...。 .
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