第1章

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5月1日 私は朝から大忙しだった。 『申し送り始めます。301号室の○○ちゃん、バイタルは今のところ落ち着いていて、尿の出も正常です。でもたまに目を盗んでジュースとかお菓子食べちゃうから目を光らせておいてね。 つぎに302号室の○○くん...』 看護主任からの申し送りにカルテと見合わせしっかり頷く。 まだここに勤め始めて1ヶ月という新米である私は、人の命を預かる今の仕事に生きがいとやりがいを感じていた。 救われた人生だからこそ誰かの人生も、それが看護師になる切っ掛けだった。 兄の夢までは叶えられなかったが。 父は外科医、母は看護師、兄もハイスクール卒業後医学の道へ進む予定だった。 あんな事件さえ起こらなければ...。 その兄から貰ったこの目で私は母と同じ看護の道へ。 兄ほど優秀じゃなかったから少し不甲斐ないけど。 それでも精一杯今の仕事を全うしたい。 闇から光が指したあの時の感動を他の子にも与えたいから。 だから小児科を希望した。 今の職場に満足以外何ものもない。 .
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