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高間の血が未だに女系で受け継がれていたら、俺という男児が生まれなければ同じことが続いていただろう。
なのに俺という存在が誕生したことで流れが変わってしまった。
俺を生き永らえさせるため...全てが犠牲にされていく。
そんな家に...真実愛を呼んでもいいものだろうか。
愛しさのあまり彼女に負わせる荷が重くなるんじゃ...。
父さんは彼女を歓迎してみせたが、腹の底ではどう考えているか。
お爺様のように高間の血のためになりふり構わずに変わってしまったとしたら...彼女の人生を台無しにしてしまうかも。
「柊吾...」
「...!?」
庭に佇む柊吾の背に父正治の声が。
「父さん...何?」
「この家に帰って来ないか?」
「えっ...」
「父さん1人になってしまって寂しくてな。
柊吾が帰ってきてくれれば安心なんだが」
「継母さんを追い出しておいて今さら1人が寂しいなんて...」
「百合子が生きていれば家族3人で暮らすはずだった家だ。桜子は元々この家の者じゃない」
「父さん...」
父が少し哀れに見えた。
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