ファンレター?

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「ん?なんだこれ?」 家に帰り、ポストを開けてみると一通の手紙が。 それを手に取ってみてみると、「坂城千尋様」と俺の名前がしっかりと書いてあった。 もしやこれは…俺へのファンレター?! 俺はまだまだ人気のない漫画家。ファンレターどころか、掲載されたことも一回しかない。 そんな俺にもとうとうファンレターが…!! 顔がどんどんにやけるのが分かった。 急いで家に入り中身を読んでみると、子供が書いたような文字で書かれていた。 『拝啓、千尋様。お体の調子はどうでしょうか。僕はとても元気です。 僕も漫画を描いているのですが、千尋様は新作は描けましたでしょうか? 僕は最近、母に才能がないからやめろと言われているところです。 たくさん書けば才能が開花するかもしれないのに、酷いですよね? 僕はこれからも頑張って書くので、千尋様も頑張ってください。』 ほう、なんと酷い母親だ。 子供の夢を応援しないなんて、母親失格だな。 それにしても、この年から漫画を描くなんてすごい子供だ… 「……っていうことがあったんだよ。」 俺はあの日の出来事を担当に話している。 「へぇ、ずいぶんと酷い親ですねぇ…」 「いや、親の言ってることはあっていたよ。才能がないからやめるべきだ。」 「はい?どうしてそんなことがわかるんです?」 「…あの手紙、昔の俺が未来の自分あてに書いたものだったんだよ。いやぁ、いくら描いても売れないんだから、昔やめていればなぁ…というか、何年も描いているのに自分が下手だって気付かない俺、だいぶやばいよなぁ…」 それまでつまらなさそうにしていた担当者はとうとうしびれを切らしたように、 「そんなことどうでもいいですから、早く原稿を描いてください!!締め切り何日過ぎてると思ってるんですか?!」 そんなこと言われても、才能のない俺はそんなに早くなんて描けっこない。
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