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崩壊の合図
忘れていた貴方の声、貴方の顔、貴方の温もり。
会えば鮮明に思い出す。感じてしまう。
あの時の純粋な気持ち、求める気持ち、一心に貴方だけに向けていたひたむきな気持ち。
懐かしい。
けれどもう、それだけだ。
元に戻ることはない。一生あり得ない。
傷は、棘は、楔は、私の心の奥底に居座り続けている。この先、癒されることがあったとしても、消えて無くなることは決してないだろう。
当時の自分と今の自分の心境の変化。
貴方は気付いているだろうか?
同じ目線で見れなくなった醜い私のことなど切り捨てて、構わずにいてくれたらいいのに。
辛い。苦しい。
感情が戻ったら心が悲鳴を上げている。
電話も、メールも、休日も、貴方の全てを私に差し出す行為は信じてしまいそうになるけれど。
どうしても、ダメ。
優しくされればされるほど、愛を感じれば感じてしまうほど、また裏切られるんじゃないか、嘘じゃないかと疑りが先に立ってしまう。
歓喜が色褪せて、嫌な自分が顔を出す。
素直じゃない。
綺麗じゃない。
真っ直ぐな気持ちで貴方に向き合えない。
なのに、振り解けない。その手を離せない。
心地良いから。夢を見せてくれるから。勇気がないから。これ以上の傷に耐えられないから。
私の下した決断を人は笑うだろう。
バカだと、同じ穴のムジナだと、救いはないと、かく言う私自身が一番そう思っている。
だけど、やっぱり責めている。許していない。
どんなに甘い場面でも、普通に隣りに居るだけでも、貴方の存在を近くに感じればふとした瞬間に傷が疼きだす。心の中は罵詈雑言の嵐に包まれる。
自分が持て余すこの醜い気持ちの捌け口を違う誰かに求めた。
仕返しではない。貴方と同じ傷が欲しいだけ。
それがあれば、貴方に対する怒りも憎しみも、相殺されると思った。
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