何も信じられなくなった

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何も信じられなくなった

「待った?」 「ううん。私もいま来たところ」 週末のデートは人でごった返す駅ビルで待ち合わせ。気合いの篭った勝負服ではないラフな格好の私に、なんか雰囲気変わったね、と笑う顔はいつもと同じ。 なんの変哲もない。 おかしいところなど一つもないと言わんばかりだ。 だから私も貴方に習って上手に取り繕う。 そう? 変わった私は嫌? と。 「全然。どんな君でも大好きだよ」 嘘つき。 だけど、ありがとうと笑う私も嘘つきだ。 傍目から見ればきっと交際は順調で、互いにいい歳だからこのままいけば当然、結婚も視野に入るだろう。 私もそう思っていたし、貴方もそのつもりだったはずだ。だって今日のデートの行き場所は貴方の実家。 紹介したいと、会って欲しいと、お願いされたのはいつだったか……残念ながら行く気はないけれど。 迎えに行くと言った貴方を断って、わざわざ電車を使った待ち合わせにしたのは、そういう意味も含まれている。 けれど、分かってないようだ。 車は近くのパーキングに止めてると、私の腰を抱く貴方の手を振り解く。 「その前に、ちょっとお茶したいな。話したいことあるし」 「そう? 分かった。じゃ、そこの茶店に入ろう」 少し強引だったかな。 訝しげな表情をしながらも、瞬時に笑顔を張り付かせる貴方は本当に本音を隠すことに慣れている。 どうせだったら、死ぬまで騙し通して欲しかった。 貴方しか見えない、貴方しかいらない、貴方だけをずっとずっと求め続けて手にしたはずなのに。 すり抜けた。 幸せも、愛も、将来も、私を彩る貴方の存在があの時に、消えてなくなってしまった。 今の私は生きる屍。 ただの抜け殻。 信じた愛に裏切られ、勝手に傷付いて勝手に終わりにする為だけに生きている。
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