「過去払いでお願いします。」

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ある日、一通の請求書と手紙が届いた。請求額はなんと15万円。彼女との海外旅行のために、必死で働いて貯めた金額と同額だ。差出人はなんと【未来の僕】だ。 どうやら、タイムマシンが開発された後の未来のネット通販では、支払いを過去の自分にになすり付けられるそうだ。...どうなっている、未来。そしてもう一通、送られてきた手紙には短い文で、こう綴られていた。 ー20歳の私へ今回、最新の冷蔵庫を買ったんだ。早急にお金が入り用だったもので。悪く思わないでくれ。 ...どうなってる、未来の僕。こんなダメな大人に成り下がっているのか!通報しようとも考えたが、筆跡が明らかに僕のものだったし、ご丁寧に拇印まで押されていた。僕しか知らないはずの、今思い出せばイタいサインもつけられていた。知恵袋さんに聞いてみたが、煽られて終わった。警察に掛け合っても、手の込んだイタズラだと勘違いされて、きっと相手にされないだろう。 それにしても、どうしてこのタイミングなのだろう。後3年もすれば、社会人として働いているからもっと稼ぎはいいはずだろうに。不思議さと、未来の自分への憤りと、虚無感と、 胡散臭さを覚えながらも、僕は必死に彼女への言い訳を考えていたのだった。 僕は彼女に土下座をしたし、土下座をするレベルで謝った。もちろん許してくれなかったし、3日間口も聞いてもらえなかった。泣く泣く旅行先を沖縄に変更したのだった。 沖縄旅行中のことだった。当初の旅行先の国で爆破テロが起こったという報道を聞いた。大通りでのテロだったため、大勢の観光客も巻き込まれ、死人が出るほど大規模のものだったそうだ。 「あぶな〜、変更しといてよかったね。」 なんて、彼女は軽く言ったけれど、最初から全て、未来の僕に仕組まれた計画だったのかもしれない。真偽はどうあれ、冷蔵庫に助けられたと思うと吹き出しそうになった。摺られた15万円のことはさっぱり忘れて、僕は旅行を楽しむことにしたのだった。 完
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